一般に、虫歯が深い場合には神経の処置が必要になることがあります。もちろん、症状はあまりなくともです。神経の処置(神経を抜く処置)をおこなうと、その歯の寿命は著しく短くなります。なんとか神経の処置を避けるために、水酸化カルシウム製剤による覆罩や、3-mix、ドックベストセメントなどを用いた治療があります。しかしながら、どの治療も予後はいいという報告がある一方で、軟化象牙質を一部残す場合があり、この場合は術者の技量に依存する割合が大きくなります。なぜなら、軟化象牙質をどの程度残すのか、また、そこに残っている細菌の量、質は定量できないからです。言い換えるならこのような治療はやや不確定な要素が大きすぎます。(だから、ある人は絶賛するし、またその他の人は採用しない、、温度差の激しい治療法です)
最近はMTAをつかっての直接覆髄、断髄が予後がいいことがわかってきて普及しつつあります。この処置は、マイクロスコープ下で、可及的に軟化象牙質を除去し、MTAで封鎖をおこなう術式です。軟化象牙質を残さない方法なので、露髄する面積が広いですが、止血を行い、MTAの歯質接着性と生体親和性に頼った治療法です。以前のMTAは造影剤として酸化ビスマスが含まれており、歯質が黒変するのが欠点だったのですが、今では酸化ビスマスを含まない覆罩用のMTAも開発され入手可能になってきました。