根管治療(その3)

前回は、初診時の第一回目の治療でしたが、今回は2回目です。動画ではもうすでに隔壁を作ってラバーダムをしています。MB2以外の根管はもう十分に拡大されてますので、あまり触りません。今回の治療のゴールはMB2の最終拡大です。

#8号のファイルで根尖まで穿通します。引っこ抜いたファイルをみると根管の湾曲がとても強いことがわかります。まあ、きちんと穿通できていればあとは#25(グレートテーパー)#8、#15、#20、#25の順番で拡大すればOKです。拡大はレシプロで、具体的にはelements_e-motion を使用してます。まだ、国内販売してなさそうなので個人輸入で購入です。 この機械は湾曲根管であっても根管およびファイルのどちらにもストレスを与えることなく拡大できるので、前のタイプからのお気に入りです。

その4に続く

elements_e-motion

タッチパネルが新しくいい感じです。TFモードがお気に入りです。

https://www.kerrdental.com/kerr-endodontics/elements-e-motion-shape

Kavo-Kerr社

樋状根

樋状根(といじょうこん)、C-shaped canal といいますが、日本人の下顎7番に多い根管形態です。言葉よりも図を見るほうがわかりやすいと思います。

 

 

 

Picture from ”Cohen’s Pathways of the Pulp” 11th edition.

 

根管治療用の器具はほとんど針のような形態をしていて、このような形の根管を清掃するにとても相性が悪いうえに、奥歯なので視界もわるく、その上に舌、唾液とも格闘しなければならないので、とても予後が悪くなります。今回の治療では舌や唾液を排除するためにラバーダム(グリーンのゴムシート)を歯にかけて、清掃は超音波チップ等を使用しています。

 

フィン イスムスの清掃

イスムスとかフィンと呼ばれる狭い部分の清掃です。この部分に感染した物質が入り込むと除去が大変困難になります。なんせ道具がありませんので。

ここでは、自作の道具でお掃除してます。0:38あたりでフィンの狭い所から汚れが浮き出ているのが見れます。

MTAを用いた歯髄温存療法

いつの場合でも、患者さんからすると”たいして痛くないのに神経抜かれた”みたいな表現をよく聞きます。もちろん、神経の処置を行うとその歯の寿命は短くなりますので、こちらとしても”神経を取る”処置はできるだけしたくないものです。けれども、麻酔して処置してそのあと痛くなったりしても困るので、神経の処置をついついしてしまうことも多々あります。裏返すと、いままではきちんと覆髄、直接覆髄、断髄がうまくできないので神経の処置をしていたのかもしれない。うまくできないのには理由があり、それは材料学的なものが一番だと思う。いまではMTAがそれに適した材料であることが明らかになり、また、MTAでもビスマスフリーで、硬化時間の早いものが製品として出てきた。下の症例はMTAがなければ200%神経の処置をしないといけない症例だと思う。

Er-YAGレーザーを用いた歯肉切除術、隔壁作成

根管治療の成功の要素としては、根管の確実な清掃が一つ挙げられます。そのためには、根管を次亜塩素酸水溶液によって洗浄し、感染源となる汚染タンパクの確実な除去が必要であると考えています。しかし、次亜塩素酸水溶液は非常に刺激が強いですから、洗浄時に口腔内に飛び散るのはいただけません。そのためには”ラバーダム”を行うことが必須であると考えています。けれど、残存歯質がすくない歯にはラバーダムがかけれませんので、隔壁を作ることが必要になります。今回の症例のように残存歯質が少なく、かつ歯肉が歯のあった部分に増殖している場合は歯肉切除術が必要です。今回の症例のように、ごくわずかの量の切除、その後の接着操作にはEr-YAGレーザーでの切除が最適です。