根管治療(その2)

CTでおおよそのことはわかったので、その予想と実際の根管の様子が同じなのか、全くCTでは予想できないような状態なのかをみていきます。

おおよそ動画で見ればいいのですが、最初は根管は開放(何もフタをしていない状態)の状態でした。ここから推測するに、前医の先生は少しお手上げ状態だったのかも知れません。根管治療の初期に置いて排膿が止まらない場合に解放して内圧を下げるということはあるのですが、治療の中期以降ではあまりないと思っています。

CTの観察結果から、MB2(近心頬側第二根管)の存在は想像できたので、その辺りを観察していったのですが、もうすでにそこにありました。ただ、根管拡大、清掃はなされていなかったようなので、ついつい、その日に拡大までしてしまいました。この清掃、拡大には特殊な器具を使っているので、朝飯前です。ただ、裸眼でハンドファイルの組み合わせでは無理だと思います。清掃、拡大が終了したので第一日目はここまでです。そう言われれば、来院理由がセカンドオピニオンだったような気がしました!! ついつい、さわってしまったのですが、あとはこの根管については普通に処置すればいいのです。とお話しをさしていただきました。

その3につづく

根管治療(その1)

CTでの観察から

 15年ぐらい前に、米国で根管治療を受けたとのこと。最近痛んだので根管治療を始めたとのこと。なぜ、本院に来院されたかというと、、忘れました?(なぜだったかなあ)まあ、なんにせよ、アメリカで根管治療したということはそんなに変なことはしていないはず。15年前であっても、アメリカで根管治療専門医ならその頃でも年収は5000万ほどはあったはず。(ただし、裁判費用で2000万ぐらい取られると、この辺りは定かではない)言い換えると、そのぐらい治療費も高いし、失敗したら裁判沙汰になるのできちんとした治療はしてるはず。

初診時のパノラマを見てみますと、上顎洞がややクラウド(黄色の部分)なのと根尖部にX線透過像(赤)が観察できますが、細かいところは不明です。

デンタルX線でも同様で今度は頬骨(青色)が邪魔で、もっとよくわかりません。単純レントゲンでは左上6に病巣によるX線透過像があることがわかりますが、それ以上の情報は得ることが難しいと思います。

そこで、CT撮影を行いました。CTでは歯の状態をあまり周囲の影響無く観察することができます。

最初に口蓋根(向かって左)と遠心頬側根(向かって右)をみていきます。どちらも状態は悪く、抜歯でもいいかも知れません。根尖には何かの充填物(黄色)がみられます。赤色の部分が病巣でかなり広くおおわれています。一般的に、上顎の大臼歯での根管治療ではまっていることが多いのは、口蓋根では根線破壊であったりするのですがその様子は見受けられないですね。

追加で矢状面でのCT像です。歯性上顎洞炎と思われる像がみられます。

次に近心頬側根ををみていきます。

青色が歯根で緑色が治療中の根管です。赤色が病巣です。一般的に病巣が根管由来なら病巣の中心に根管が位置するはずですし、また根管も歯根の中心にきますので、容易に近心頬側第2根管がありそうだと予測できます。

パノラマX線、デンタルX線およびCTから、今回の根管治療はMB2をしっかり探すことが大切なのではないかと考えました。そこで実際の歯を観察してみました。(その2に続く)

なぜ、根管治療をするのか?

タイトルの通りですが、なぜするのでしょう?

右上の6番の違和感を訴えられ、来院されました。右上の7番は抜歯してありますね。(画面向かって左上の歯が一本少ない)なんとなく変な感じがするもののいまいちパノラマ写真では不明です。

デンタルX-線では遠心根がおかしいようにも見えます。

遠心頬側根の大きな病巣
矢状断 でみると 明らかに根尖部分の骨が溶けている=感染がある

CTで観察すると明らかに、大きな病巣(黒く、骨の様相が異なっている部分がある。)を認めます。これが、違和感の原因です。このような病巣を残したままにすると、もちろん将来的には痛むでしょうし、今でも血中感染の原因(=菌血症)となるので何とかしたほうがいいと思います。また、CTから若干、上顎洞の炎症もあるように見えます。この歯が原因で、直接的もしくは間接的に上顎洞炎(蓄膿)を惹起もしくは憎悪している可能性も否定できません。このような状態では免疫力の低下も引き起こすかもしれません。このような場合に、よその歯医者さんで、”様子を見ましょう”とか”抗生剤でも飲みましょう”とか言われるかもしれませんが、それは”痛くない歯に手をだして抜歯になる”という結末が見えているから、そのような提案がなされるのです。だれも、やぶへびをつついて、恨まれたくないのです。けど、ぼくは治療をお勧めします。今痛くはないけど、今、現在、体のためによくないし、待っていても治りません。(短期的には、抗生剤でも飲んどけばその場はしのげます。)(このような決断で何度痛い目にあったことか?)

今回の治療の目標は”歯を直す”ことではありません!!体の中から”感染源”をなくすことです。その目標を達成するに一番簡単な手段は”抜歯”です。短期間で、保険も聞きますので安く早く感染源の除去ができます。どうしても、歯を残したいなら歯の中からお掃除をする根管治療です。これは場合によっては外科を伴う場合もありますし、また、歯が破折していたなら、抜歯です。

痛くなく、安く、歯も残したいという都合のいい方法はありません(あるなら、もう治療してあるはずです)。逆に、顕微鏡をつかって、新しい材料を使えば必ず歯が残せるという保証もありません。そこで、選択をするのは、患者さんです。   

あ~   と残りの文章はまた気が向いたら~~

通法では発見困難な根管の探索および拡大

他院からの紹介です。近心根管にリーマー挿入時に違和感が消えないとのことでした。CTを撮影してみると、MB根が存在しそうな根管形態です。実際にのぞいてみると、、、まったく、見つかりません!!滝汗~~~

気を取り直してMLからのフィンを清掃することにしました。すると、Er-YAGレーザー処置中にイスムスの形が見えてきました。試しにリーマーを挿入してみると、、OK、”I got the penetration !!!!” 今回の症例は少し焦りましたね。

MTA断髄の2年後の予後

タイトルの通りですが、断髄や直接覆髄をおこなって、直後の予後が良くても、長期的な予後が良くないとまったく意味はない。歯髄に炎症が惹起されたり、部分的な歯髄壊死が起こればそれは何の意味もないものです。今回の動画はMTAで断髄を行って2年後の右上6番のCT像です。もちろん冷温水痛や咬合痛もありません。CTから上顎洞の炎症もないことがよくわかります。これは、若年者の断髄の予後の良さを示す一症例だと思います。オリジナルの断髄の様子は 下のURLから見られます。
https://www.youtube.com/watch?v=7IRFfTSGRJs