根管治療(その2)

CTでおおよそのことはわかったので、その予想と実際の根管の様子が同じなのか、全くCTでは予想できないような状態なのかをみていきます。

おおよそ動画で見ればいいのですが、最初は根管は開放(何もフタをしていない状態)の状態でした。ここから推測するに、前医の先生は少しお手上げ状態だったのかも知れません。根管治療の初期に置いて排膿が止まらない場合に解放して内圧を下げるということはあるのですが、治療の中期以降ではあまりないと思っています。

CTの観察結果から、MB2(近心頬側第二根管)の存在は想像できたので、その辺りを観察していったのですが、もうすでにそこにありました。ただ、根管拡大、清掃はなされていなかったようなので、ついつい、その日に拡大までしてしまいました。この清掃、拡大には特殊な器具を使っているので、朝飯前です。ただ、裸眼でハンドファイルの組み合わせでは無理だと思います。清掃、拡大が終了したので第一日目はここまでです。そう言われれば、来院理由がセカンドオピニオンだったような気がしました!! ついつい、さわってしまったのですが、あとはこの根管については普通に処置すればいいのです。とお話しをさしていただきました。

その3につづく

なぜ、根管治療をするのか?

タイトルの通りですが、なぜするのでしょう?

右上の6番の違和感を訴えられ、来院されました。右上の7番は抜歯してありますね。(画面向かって左上の歯が一本少ない)なんとなく変な感じがするもののいまいちパノラマ写真では不明です。

デンタルX-線では遠心根がおかしいようにも見えます。

遠心頬側根の大きな病巣
矢状断 でみると 明らかに根尖部分の骨が溶けている=感染がある

CTで観察すると明らかに、大きな病巣(黒く、骨の様相が異なっている部分がある。)を認めます。これが、違和感の原因です。このような病巣を残したままにすると、もちろん将来的には痛むでしょうし、今でも血中感染の原因(=菌血症)となるので何とかしたほうがいいと思います。また、CTから若干、上顎洞の炎症もあるように見えます。この歯が原因で、直接的もしくは間接的に上顎洞炎(蓄膿)を惹起もしくは憎悪している可能性も否定できません。このような状態では免疫力の低下も引き起こすかもしれません。このような場合に、よその歯医者さんで、”様子を見ましょう”とか”抗生剤でも飲みましょう”とか言われるかもしれませんが、それは”痛くない歯に手をだして抜歯になる”という結末が見えているから、そのような提案がなされるのです。だれも、やぶへびをつついて、恨まれたくないのです。けど、ぼくは治療をお勧めします。今痛くはないけど、今、現在、体のためによくないし、待っていても治りません。(短期的には、抗生剤でも飲んどけばその場はしのげます。)(このような決断で何度痛い目にあったことか?)

今回の治療の目標は”歯を直す”ことではありません!!体の中から”感染源”をなくすことです。その目標を達成するに一番簡単な手段は”抜歯”です。短期間で、保険も聞きますので安く早く感染源の除去ができます。どうしても、歯を残したいなら歯の中からお掃除をする根管治療です。これは場合によっては外科を伴う場合もありますし、また、歯が破折していたなら、抜歯です。

痛くなく、安く、歯も残したいという都合のいい方法はありません(あるなら、もう治療してあるはずです)。逆に、顕微鏡をつかって、新しい材料を使えば必ず歯が残せるという保証もありません。そこで、選択をするのは、患者さんです。   

あ~   と残りの文章はまた気が向いたら~~

Er-YAG レーザーでの根管治療

西日本歯内療法学会での発表ネタですね。

根管の明示にはいろんな方法や知識が必要なのはいうまでもないのですが、よく言われるのが解剖学的知識が重要とかよく言われます。けれどこれがかなりの曲者です。例えば、上の7番において2根管のこともあれば、4根管のこともある。根管を2つ見つけてこれで終わりとすると、実はもう1つあったとか、はたまた、2つで正解なんだが、探しすぎて穿孔して歯に大きなダメージを与えたりとか、どのような解剖学的知識が必要なのか、よくわかんないよねー というのが本音です。そこで、確実に、安全で、安心な、根管の探索です。歯科用顕微鏡とCTとEr-YAGレーザーのコンビネーションがそれを実現します。

根管洗浄:EndoVacをもちいて

膿でドロドロになっている根管の洗浄です。

根管の中が汚染されているといつまでたっても痛みは止まらず、また治りません。そのため根管を拭いたりするのですが、どうしても拭き残しがでると思うので、きちんと根管洗浄を行うのがいいと思います。大切なことは、根管の先端まできっちり洗浄すること。以外にこれが難しい。根尖に汚れを残してあったりとか。拭くついでにわずかな汚れを押し込んだりとか、はたまた、洗浄液の根尖を超えての押し出しはさらに怖いと。このような問題を解決した根管洗浄法として”EndoVac”を使用した陰圧洗浄があります。Part 1の動画では根管洗浄をしており、1:30ぐらいでは根尖からの出血も確認できます。いわゆる血膿を吸い上げている状態でしょうか。

Part 2の動画では透明な歯牙模型(True tooth:Dental Engineering Laboratories製)でEndoVacを使用しての根管洗浄の様子です。低倍率ではよくわからないと思いますが、1:25あたりの様子では、EndoVacのチップは根尖に届いていないのですが、洗浄溶液が根尖まで届いて循環している様子がわかると思います。

 

 

 

 

メタルコアの除去

左上は案の定、歯根破折してました。これは仕方なく抜歯です。

 

 

 

右にも根尖に病巣があるし、違和感もあるしで根管治療が必要ですが、しかし、しかし、ポスト深い~~。なんでここまで深いの??ここまで深いとそりゃ歯根破折の可能性も増します。

 

 

根管治療のリスクになるのが、大きなポストです。根管治療をするためには根管にアクセスしないといけないのだが、大きなポストがあると、除去が困難で、下手にはずすと歯根破折や穿孔してしまい、歯を助けているのか、壊しているのかわからくなる。今回の症例もポストがあまりに大きいので歯根端切除しようか迷っているあいだに、違和感も出てきてので、ポスト除去を試みました。(やってできないことはない!)動画はポスト除去後の動画です。(除去中ではない。)根管壁もそれほど傷つけずに優しい除去ができたと思います。