根管治療(その5)

さて、一連の根管治療も今回の投稿で最後の回です。根管がきれいになったら根管充填を行います。保険治療では根管充填の材料および方法にはそんなにバリエーションはありませんが、保険外治療なら話は別です。根尖が大きく開いてる場合(破壊されている場合も含む)、骨再生を期待したいときはMTAでの根幹充填が有利だと思っています。ただ、なんでもかんでもというわけで無く、根管が狭く、無菌的な場合はガッタパーチャーがいいと思っています。

術前(2ヶ月前)ですが、以前に書いたように上顎洞の粘膜は炎症で肥厚し、歯の周囲の骨も溶けているのか、明確には認められなくなってます。

このCTは根充直後ですが、いい感じではないでしょうか?上顎洞粘膜の肥厚も明らかに消失傾向だと思いますし(青色)、歯の周囲の骨(黄色)の再生も明らかだと思います。根充直後なので、これらの結果は、MB2の拡大清掃とHFCによってもたらされた結果だと考えています。今後はMTAにより再生がもう少し進んでくると思われるのでCTやレントゲンで経過観察予定です。

(あとがき)だいたい、症状が改善してくると、みなさんポロっと 本当の胸の内を明かし始始められることが多いです。例えば、今まで歯医者6件めぐったとか、3年苦しんでたとか、、、、まあ、そんなこと治療には関係ないのでどうでもいいんですよね。何件巡っていても、何年もかかっていても治る時には治ります。歯が割れていなければね、

MTA断髄の2年後の予後

タイトルの通りですが、断髄や直接覆髄をおこなって、直後の予後が良くても、長期的な予後が良くないとまったく意味はない。歯髄に炎症が惹起されたり、部分的な歯髄壊死が起こればそれは何の意味もないものです。今回の動画はMTAで断髄を行って2年後の右上6番のCT像です。もちろん冷温水痛や咬合痛もありません。CTから上顎洞の炎症もないことがよくわかります。これは、若年者の断髄の予後の良さを示す一症例だと思います。オリジナルの断髄の様子は 下のURLから見られます。
https://www.youtube.com/watch?v=7IRFfTSGRJs

 

MB2の探索、上顎大臼歯

福山市の北のほうからの患者さんです。根管処置をして冠を入れるも、痛みが引かないので、冠を除去して再び根管治療を行うも症状が引かない。=打つ手がないので抜歯かもとなった時点での紹介です。紹介していただいた先生もレントゲンから近心頬側根が原因と考えられていたのでしょう。同部のみの削合がしてありました。メタルコアとレジンコアが混在してたので2回ほどはされたのかな?

CTで確認すると近心頬側第二根管(MB2)がありそうな気もしたので、MB1のフィンを削合しつつMB2の探索を行いました。

まずは、CTで歯根の断面図、病巣との位置関係を確認して、第二根管が存在するのか、しないのかのおおよそのあたりを付けます。もしも第二根管が存在しないのにドンドン削合すると当然歯はだめになります。安全に、確実にMB2を発見することがなにより大切です。Er-YAGレーザーは水に特異的に反応するので、様々な解剖学的形態が混在する歯質の削除に適しています。最初は、MB1のフィンを探すようにレーザーを当てます。その後フィンの末端にMB2があるかを確認します。この手順では、Er-YAGレーザーはもちろん必須で、他にも歯科用顕微鏡とできればYirro-plus ミラーとかもほしい。

MB2の入り口を明示したらあとは拡大をして(一言で書いてますが、ここにもいろんなノウハウと特殊器材が投入されます)一回目の診療は終わりです。次回来院時には打診はやや残るものの、症状は引き気味で、3回目の来院時にはすべての症状が治まりました。

 

 

 

 

大きな根尖病巣

 

検診にはきちんといかれてたらしいが、右下が痛くなったので相談すると、病巣が大きくていきなり抜歯宣告を受けたらしい。病巣も大きくて、下顎管(大きな)に接しているため、それもしょうがないのかもしれませんが、患者さんの立場からすると腑に落ちないのも納得できます。

とにかく下顎の7番目の歯は根管が複雑で、単純にガッターパーチャーポイントをいれたぐらいではきちんと直せないことが多いです。あと、下顎の7番など奥に行けば行くほど、治療用器具の操作性も悪くなるので、確実な器具操作が困難です。経験と勘でなんとかするものかもしれませんが、これほどあてにならないものもありません。”直視直達”これに勝るものはありません。今回のケースではさらに、歯がやや奥向きかつ内側に傾いていたので、レントゲンで見る以上に困難でした。逆説的に考えると、顕微鏡なし、ラバーダムなしでの下の7番のきちんとした根管充填はなかなか難しいと思われるので、その辺りをCTや顕微鏡などのツールを活用してネガをつぶしていくと、他の部位と同じように下顎7番であっても治癒にもっていけると思います。

 

今回の症例でも、古いガッターパチャーを除去して、確実な根管拡大および洗浄を行って、MTAを用いて根管充填しました。術前では下顎管までくっきりとぬけていた透過像がなくなり、根尖周囲に骨ができてきたのがわかります。もう少しまてばもっと回復してくるのではないでしょうか。

MTAによる断髄の予後について

 

術直後

以前、MTAにて断髄を行った症例の経過観察をさせていただきました。術直後はやや冷水痛があったものの今は何ともなくなったそうです。レントゲンでの経過を見てみると、直後ではMTAが歯髄に接しており、MTAは歯髄に向かって凸状に充填されています。逆に歯髄はMTAに対して凹んでいます。この様子は、動画での充填の様相と矛盾しないと思います。ちょっとわかりにくいので、線で示してみました。左も右も同じ写真です。

 

約10ケ月ですが、歯髄の先端、MTAと接している部分が丸くなっているのがわかります。

別角度でもう一枚、この写真でもやはり同じように見えます。ここで歯髄の先端が丸く見えるのはMTAによって歯髄組織が硬組織に置換されてきたものと考えられます。すなわち、象牙質再生が起こっているとも考えられます。動画での軟化象牙質の除去後の歯髄露出をみて、そして歯髄を保存したことを”無謀”とみられた方も多くおられると思いますが、このように経過を見ていくと、決して無謀ではなく、きちんとした手順を踏めば、ほとんどの歯髄は保存可能と思われます。