Yirro-plus self-cleaning mirror

最近の動画では、ほぼこのミラーを使っているのですが、ミラーの先からエアーをだして、自動的にミラーをクリーニングしてくれるという優れものです。顕微鏡下での処置はほぼミラーを見ながらの処置になりますが、いかにきれいな視野を確保するかは大きな問題です。アシスタントに風をかけてもらうのもいいのですが、ず~~っとかけ続けなくてはなりません。しかしそれでは、患者さんのバキュームがおろそかになったりするとかの問題点もあります。そこで、この”Yirro-plus self-cleaning mirror”です。図にあるように常にエアーブローを続けてくれて視野を確保してくれます。ミラーを拭く回数も激減するため、処置に集中できます。ミラーも明るいし、顕微鏡下での処置ではなくてはならないものです。

大きな根尖病巣

 

検診にはきちんといかれてたらしいが、右下が痛くなったので相談すると、病巣が大きくていきなり抜歯宣告を受けたらしい。病巣も大きくて、下顎管(大きな)に接しているため、それもしょうがないのかもしれませんが、患者さんの立場からすると腑に落ちないのも納得できます。

とにかく下顎の7番目の歯は根管が複雑で、単純にガッターパーチャーポイントをいれたぐらいではきちんと直せないことが多いです。あと、下顎の7番など奥に行けば行くほど、治療用器具の操作性も悪くなるので、確実な器具操作が困難です。経験と勘でなんとかするものかもしれませんが、これほどあてにならないものもありません。”直視直達”これに勝るものはありません。今回のケースではさらに、歯がやや奥向きかつ内側に傾いていたので、レントゲンで見る以上に困難でした。逆説的に考えると、顕微鏡なし、ラバーダムなしでの下の7番のきちんとした根管充填はなかなか難しいと思われるので、その辺りをCTや顕微鏡などのツールを活用してネガをつぶしていくと、他の部位と同じように下顎7番であっても治癒にもっていけると思います。

 

今回の症例でも、古いガッターパチャーを除去して、確実な根管拡大および洗浄を行って、MTAを用いて根管充填しました。術前では下顎管までくっきりとぬけていた透過像がなくなり、根尖周囲に骨ができてきたのがわかります。もう少しまてばもっと回復してくるのではないでしょうか。

リーマー除去

リーマー破折があり、かつその先に病巣があると厄介です。除去できなければ、歯根端切除、意図的再植術もしくは抜歯をしないといけないと思います。もちろん、病巣がないのであれば、除去する必要はありません。すべての歯科治療の中で、一番困難なことの一つに、根管の中の破折リーマー除去があげられるのではないでしょうか?よく噛める入れ歯をつくりますと、とかインプラント、ホワイトニングについての宣伝はよく見ますが、破折リーマー除去できます!!ということはあまり見かけないと思います。(もちろん、マイナーな問題だからかもしれませんが。)

 

破折リーマーの除去は本当に難易度も高く、2mmのものを除去するために3~4時間かかることもありましたし、除去不可能なこともありました。(一般的には、除去不可能なので、破折リーマー=除去不可能=抜歯というイメージでしょうか。)しかし、いまでは、30分程度で除去できるようになりました。今回の症例でも右上7番の遠心頬側根に2本の破折リーマーが入っていましたが、1時間とかからず除去できました。

もちろん、このようなことを行うには技術を求められるのかもしれませんが、CTを用いた診断等が大切なのはいうまでもありません。これは別症例ですが、とても深いところにある小さな破折器具ですが、きちんと除去できました。破折器具除去においても、技術および経験も大切ですが、一番大切なのは診断(≒知識)です。

左上7番間接覆髄

結果的に間接覆髄になったとはいえ、結構深い虫歯です。

ラバーダムを行い(ソフトクランプとラバーは厚めものです)

軟化象牙質の除去(最初は手指の感覚で)

う蝕検知液の使用し(カリエスディテクター:1%アシッドレッド)

Er-YAGレーザーで完全にう蝕を除去して(ビデオでは省略してます)

MTA覆罩です。間接覆髄としての材料としても非常に優れています。

術後は咬合痛もなく、非常に良好です

 

 

MTAによる断髄の予後について

 

術直後

以前、MTAにて断髄を行った症例の経過観察をさせていただきました。術直後はやや冷水痛があったものの今は何ともなくなったそうです。レントゲンでの経過を見てみると、直後ではMTAが歯髄に接しており、MTAは歯髄に向かって凸状に充填されています。逆に歯髄はMTAに対して凹んでいます。この様子は、動画での充填の様相と矛盾しないと思います。ちょっとわかりにくいので、線で示してみました。左も右も同じ写真です。

 

約10ケ月ですが、歯髄の先端、MTAと接している部分が丸くなっているのがわかります。

別角度でもう一枚、この写真でもやはり同じように見えます。ここで歯髄の先端が丸く見えるのはMTAによって歯髄組織が硬組織に置換されてきたものと考えられます。すなわち、象牙質再生が起こっているとも考えられます。動画での軟化象牙質の除去後の歯髄露出をみて、そして歯髄を保存したことを”無謀”とみられた方も多くおられると思いますが、このように経過を見ていくと、決して無謀ではなく、きちんとした手順を踏めば、ほとんどの歯髄は保存可能と思われます。