急げ!!MB2

テキトーなタイトルですが、今回は右上6番のMB2の拡大。

主訴としては、最初に眼精疲労、右後頭部の頭痛、バファリンもロキソニンも聞かない。そして2~3日前より歯も痛くなったとのことでした。

CTでは、明らかに近心頬側に病巣があり、そこから、歯性と思われる上顎洞炎も併発しています。原因は右上6番のMB2とほぼ断定できるので同部の感染根管治療が必要です。(上顎洞の手術は必要ないのではないかと思われます。)。加えて、3週間後には長期の海外出張にでられるとのことです。(急げ~~)

一日で、クラウンの除去、コアの除去(近心頬側部のみ)を行い、MB2を根尖まで穿通しました。2回目の来院では症状がひきました。3日目の来院で根管充填を行い、”絶好調!!”とのお言葉もいただきました。いろんな道具があればMB2の拡大も全く困難ではありません。

 

大きな根尖病巣

 

検診にはきちんといかれてたらしいが、右下が痛くなったので相談すると、病巣が大きくていきなり抜歯宣告を受けたらしい。病巣も大きくて、下顎管(大きな)に接しているため、それもしょうがないのかもしれませんが、患者さんの立場からすると腑に落ちないのも納得できます。

とにかく下顎の7番目の歯は根管が複雑で、単純にガッターパーチャーポイントをいれたぐらいではきちんと直せないことが多いです。あと、下顎の7番など奥に行けば行くほど、治療用器具の操作性も悪くなるので、確実な器具操作が困難です。経験と勘でなんとかするものかもしれませんが、これほどあてにならないものもありません。”直視直達”これに勝るものはありません。今回のケースではさらに、歯がやや奥向きかつ内側に傾いていたので、レントゲンで見る以上に困難でした。逆説的に考えると、顕微鏡なし、ラバーダムなしでの下の7番のきちんとした根管充填はなかなか難しいと思われるので、その辺りをCTや顕微鏡などのツールを活用してネガをつぶしていくと、他の部位と同じように下顎7番であっても治癒にもっていけると思います。

 

今回の症例でも、古いガッターパチャーを除去して、確実な根管拡大および洗浄を行って、MTAを用いて根管充填しました。術前では下顎管までくっきりとぬけていた透過像がなくなり、根尖周囲に骨ができてきたのがわかります。もう少しまてばもっと回復してくるのではないでしょうか。

リーマー除去

リーマー破折があり、かつその先に病巣があると厄介です。除去できなければ、歯根端切除、意図的再植術もしくは抜歯をしないといけないと思います。もちろん、病巣がないのであれば、除去する必要はありません。すべての歯科治療の中で、一番困難なことの一つに、根管の中の破折リーマー除去があげられるのではないでしょうか?よく噛める入れ歯をつくりますと、とかインプラント、ホワイトニングについての宣伝はよく見ますが、破折リーマー除去できます!!ということはあまり見かけないと思います。(もちろん、マイナーな問題だからかもしれませんが。)

 

破折リーマーの除去は本当に難易度も高く、2mmのものを除去するために3~4時間かかることもありましたし、除去不可能なこともありました。(一般的には、除去不可能なので、破折リーマー=除去不可能=抜歯というイメージでしょうか。)しかし、いまでは、30分程度で除去できるようになりました。今回の症例でも右上7番の遠心頬側根に2本の破折リーマーが入っていましたが、1時間とかからず除去できました。

もちろん、このようなことを行うには技術を求められるのかもしれませんが、CTを用いた診断等が大切なのはいうまでもありません。これは別症例ですが、とても深いところにある小さな破折器具ですが、きちんと除去できました。破折器具除去においても、技術および経験も大切ですが、一番大切なのは診断(≒知識)です。

あきらめない 話

 

タイトルのとおりあきらめないお話。

術前では病巣もおおきく、まあ、抜歯という判断も妥当と思われなくもない。前医では抜歯してインプラントを勧められたそうです。パノラマレントゲンでも大きな病巣がありそうだし、CTでも上顎洞の半分を占めそうな勢いのある病巣がみられます。ただし、歯に破折はなく、動揺もそれほどではない。また、文献的には病巣の大きさはたいして予後を大きく左右する因子でもないので、しっかりと診断して治療をすれば問題ないのではと思われました。今回の症例では左上の4番も失活していました。また。根尖の大きさにも問題がありました。根尖の大きさの問題を解決する手段はMTAの使用しかないのではないかと思われます。逆にいうとガッターパーチャーで根充する保険治療では治癒しないと思われます。(カスタムコーン テクニックとかあるのですが、予後が不安すぎて、、)この症例もきちんと根管洗浄してMATでの根充を行い経過を観察しています。まだまだ。骨の不安定な所もありますが、臨床的な症状は根管充填直後から消失し経過は良好ではないかと思っています。CTでも大幅な改善を認めています。

 

破折器具除去、パーフォレーションリペアとMTAによる根管充填

 知り合いの先生からの紹介、治療途中で器具が破折したらしい、2か月間がんばったが除去できない、もちろん歯の痛みも取れないとのこと。2

 最初に断っておくと、折れない器具はありません(当たり前)。なので細心の注意をはらっても、折れることもあります。おれてもその先に感染源がなければ無理に除去する必要はありませんし、何の問題もありません。しかしながら、今回の場合は破折器具がやや根尖を突き抜けているし、病巣もあるし、歯も痛いので除去は必須です。できなければ抜歯です。言い換えるなら、保険治療なら100%抜歯です。

今回の破折器具の除去は非常に簡単でした。あまりに簡単なので、ラバーダムするの忘れてます、、、、マイクロを除いて、破折器具が見えている、動揺しているので何の問題もなく取れました。10分とかかっていません。

次の問題は近心壁に穿孔していることと、根尖が大きく壊れていることです。穿孔部から覗いている組織はEr-YAGレーザーで処理します。余分な歯質は削除しないし、象牙質の表面処理も同時にできているので、このような場合にEr-YAGレーザーの使用はとっても便利です。あとはMTAにて穿孔部をリペアしつつ、根管充填を行うことで問題解決です。project-screenshot

処置終了後、1か月程度の様子ですが、根尖の透過像などすべてが回復傾向にあると思います。