根管洗浄:EndoVacをもちいて

膿でドロドロになっている根管の洗浄です。

根管の中が汚染されているといつまでたっても痛みは止まらず、また治りません。そのため根管を拭いたりするのですが、どうしても拭き残しがでると思うので、きちんと根管洗浄を行うのがいいと思います。大切なことは、根管の先端まできっちり洗浄すること。以外にこれが難しい。根尖に汚れを残してあったりとか。拭くついでにわずかな汚れを押し込んだりとか、はたまた、洗浄液の根尖を超えての押し出しはさらに怖いと。このような問題を解決した根管洗浄法として”EndoVac”を使用した陰圧洗浄があります。Part 1の動画では根管洗浄をしており、1:30ぐらいでは根尖からの出血も確認できます。いわゆる血膿を吸い上げている状態でしょうか。

Part 2の動画では透明な歯牙模型(True tooth:Dental Engineering Laboratories製)でEndoVacを使用しての根管洗浄の様子です。低倍率ではよくわからないと思いますが、1:25あたりの様子では、EndoVacのチップは根尖に届いていないのですが、洗浄溶液が根尖まで届いて循環している様子がわかると思います。

 

 

 

 

樋状根

樋状根(といじょうこん)、C-shaped canal といいますが、日本人の下顎7番に多い根管形態です。言葉よりも図を見るほうがわかりやすいと思います。

 

 

 

Picture from ”Cohen’s Pathways of the Pulp” 11th edition.

 

根管治療用の器具はほとんど針のような形態をしていて、このような形の根管を清掃するにとても相性が悪いうえに、奥歯なので視界もわるく、その上に舌、唾液とも格闘しなければならないので、とても予後が悪くなります。今回の治療では舌や唾液を排除するためにラバーダム(グリーンのゴムシート)を歯にかけて、清掃は超音波チップ等を使用しています。

 

急げ!!MB2

テキトーなタイトルですが、今回は右上6番のMB2の拡大。

主訴としては、最初に眼精疲労、右後頭部の頭痛、バファリンもロキソニンも聞かない。そして2~3日前より歯も痛くなったとのことでした。

CTでは、明らかに近心頬側に病巣があり、そこから、歯性と思われる上顎洞炎も併発しています。原因は右上6番のMB2とほぼ断定できるので同部の感染根管治療が必要です。(上顎洞の手術は必要ないのではないかと思われます。)。加えて、3週間後には長期の海外出張にでられるとのことです。(急げ~~)

一日で、クラウンの除去、コアの除去(近心頬側部のみ)を行い、MB2を根尖まで穿通しました。2回目の来院では症状がひきました。3日目の来院で根管充填を行い、”絶好調!!”とのお言葉もいただきました。いろんな道具があればMB2の拡大も全く困難ではありません。

 

大きな根尖病巣

 

検診にはきちんといかれてたらしいが、右下が痛くなったので相談すると、病巣が大きくていきなり抜歯宣告を受けたらしい。病巣も大きくて、下顎管(大きな)に接しているため、それもしょうがないのかもしれませんが、患者さんの立場からすると腑に落ちないのも納得できます。

とにかく下顎の7番目の歯は根管が複雑で、単純にガッターパーチャーポイントをいれたぐらいではきちんと直せないことが多いです。あと、下顎の7番など奥に行けば行くほど、治療用器具の操作性も悪くなるので、確実な器具操作が困難です。経験と勘でなんとかするものかもしれませんが、これほどあてにならないものもありません。”直視直達”これに勝るものはありません。今回のケースではさらに、歯がやや奥向きかつ内側に傾いていたので、レントゲンで見る以上に困難でした。逆説的に考えると、顕微鏡なし、ラバーダムなしでの下の7番のきちんとした根管充填はなかなか難しいと思われるので、その辺りをCTや顕微鏡などのツールを活用してネガをつぶしていくと、他の部位と同じように下顎7番であっても治癒にもっていけると思います。

 

今回の症例でも、古いガッターパチャーを除去して、確実な根管拡大および洗浄を行って、MTAを用いて根管充填しました。術前では下顎管までくっきりとぬけていた透過像がなくなり、根尖周囲に骨ができてきたのがわかります。もう少しまてばもっと回復してくるのではないでしょうか。

リーマー除去

リーマー破折があり、かつその先に病巣があると厄介です。除去できなければ、歯根端切除、意図的再植術もしくは抜歯をしないといけないと思います。もちろん、病巣がないのであれば、除去する必要はありません。すべての歯科治療の中で、一番困難なことの一つに、根管の中の破折リーマー除去があげられるのではないでしょうか?よく噛める入れ歯をつくりますと、とかインプラント、ホワイトニングについての宣伝はよく見ますが、破折リーマー除去できます!!ということはあまり見かけないと思います。(もちろん、マイナーな問題だからかもしれませんが。)

 

破折リーマーの除去は本当に難易度も高く、2mmのものを除去するために3~4時間かかることもありましたし、除去不可能なこともありました。(一般的には、除去不可能なので、破折リーマー=除去不可能=抜歯というイメージでしょうか。)しかし、いまでは、30分程度で除去できるようになりました。今回の症例でも右上7番の遠心頬側根に2本の破折リーマーが入っていましたが、1時間とかからず除去できました。

もちろん、このようなことを行うには技術を求められるのかもしれませんが、CTを用いた診断等が大切なのはいうまでもありません。これは別症例ですが、とても深いところにある小さな破折器具ですが、きちんと除去できました。破折器具除去においても、技術および経験も大切ですが、一番大切なのは診断(≒知識)です。