今回は少し変わったタイトルですが、、
MTAは覆髄として保険適用されていますが、根管充填剤としては保険適応外です。しかしながら、正確に手順を守って使えばこれほどよい根管充填剤はないと思います。今までの常識では100%保存不可能だと考えられていた歯、(論議するまでのないぐらいひどい状態であっても)も治癒に持っていくことができることもあります。しかしながらそれは、顕微鏡下での確実な根管清掃や、CTを用いた確実な診断あってこそです。ただ、単にMTAを充填しただけでは治りません、魔法のお薬ではないのですから。
なぜ、そのようなことを書いたかというと、先日歯科医師会での休日診療を行っていたところ、上顎が腫れた患者さんが来られました。上顎の歯にMTAが充填してありました。お話を聞くと”根っこの先の膿は取れないので、MTAをいれてみましょう?”だそうです。MTAは魔法のお薬ではないので、根管拡大等の処置が不十分なところにいれても無駄だと思うのですが、、、
この写真の患者さんは歯茎の腫れがひかないとのことで来院されました。レントゲンでは
1:リーマーの破折があり、
2:パーフォレーションもあり、
3:一部歯が破折しているようにも見えます。
さすがにこれは”無理です”とお断りしようかなと思ったのですが、歯を実際に診てみると意外に動揺はありませんでした。ということは
3:破折はしているけれども、完全破折ではない。2:パーフォレーションはリペアすればいいし、1:リーマーは除去すればいい。と考えられました。破折部分はMTAを充填することにより硬組織の再生にもつながります。
初診時にしっかりとお話をして同意が得られたので、浸麻して根管内のものをすべて除去し、根管の清掃を徹底的に行いました。根管内には増殖した歯肉もあったのですがこれはEr-YAGレーザーで除去しました。2回目の来院では歯肉の腫れ、慢性的な痛みもすべて消えていました。そこで、根管充填およびパーフォレーションリペアをMTAをもちいて行いました。
MTAの充填終了後です。もちろん、すべての症状は消え、なんの問題もありません。このような症例ではガッターパーチャーでの充填は無理だと思われます。MTAを使用してならではの症例だと思います。これでみるとやっぱMTAは魔法の薬かもね~~




根管
治療後、咬合痛および自発痛を訴えて来られました。レントゲンからは遠心根のガッターパチャ―が途中で消えるような画像です。仮封を外してみると、青い物が見えます。これは、多分印象材が根管に剥がれ残ったものと考えられます。また、青い印象材を剥がしてみると、根尖の拡大図では歯髄組織の残存が見られます。ただし、痛みの種類が違うと思ったので、CTを撮影してみると、、、
今回の症例では、穿孔のある遠心根はMTAで根管充填を行い、近心根は問題なかったのでガッターパチャ―で根管充填しました。MTAの充填は非常に予後もよく、2年ほど経過していますが、なんの問題もありません。