左上4 直接覆髄

歯髄(歯の神経)を取らないほうが、歯が長期的に残るのは論を待たない。しかしながら、日本はやたらと神経をとる国に入ると思う。これは、後々のトラブルをおそれてなのか、保険制度の問題か、もしくは日本の歯科教育の問題かもしれない。しかし、関係者なら、神経の処置をしない=言い換えるなら歯髄保存療法がどれだけ大切かはよく知っているので、確実で安心な歯髄保存療法の出現が待たれている。いままで、いろんな方法がでてきたものの、MTAによる歯髄保存療法はその予後の良さがとびぬけているように思う。また、海外の論文でも報告は多く、その予後の良さにはエビデンスがあるといっていいと思う。例えば、、

 

A randomized trial of direct pulp capping in primary molars using MTA compared to 3Mixtatin: a novel pulp capping biomaterial.

3-mix と シンバスタチン のコンビネーションは詳しくはしらないけど、論文の中で、MTAの成功率は93.8%、それに対して単なる3-mixは57.1%との報告(3-mixの成功率の低さ、、、)

Direct Pulp Capping With Mineral Trioxide Aggregate: An Observational Study

BogenらによるとMTAによる歯髄保存療法は97.96%の成功率で特に若年者の15症例では優れた成績を残したとのことであった。(超意訳です、、) All teeth in younger patients (15/15) that initially had had open apexes showed completed root formation (apexogenesis).

 

歯を残すためには、、安易に神経を取る処置をしないこと、これに尽きると思う。以前は 歯髄の露出=抜髄処置 であったがこれからは変わってくるように思う、ただ、ラバーダム、歯科用顕微鏡そして直覆用のMTAの使用が必須だと思います。

術前:

右上4番遠心にカリエスがあり。その範囲も広く、露髄の心配をしないといけない。ただし。冷水痛はあるものの、その他の症状はない。

 

 

術後:歯髄ギリギリまで、(動画では露出しているので、ギリギリではないが、、)修復物認められる。術直後に痛みがあったが、その後は落ち着いており、現在のところ咬合痛などはない。

 

 

 

フィン イスムスの清掃

イスムスとかフィンと呼ばれる狭い部分の清掃です。この部分に感染した物質が入り込むと除去が大変困難になります。なんせ道具がありませんので。

ここでは、自作の道具でお掃除してます。0:38あたりでフィンの狭い所から汚れが浮き出ているのが見れます。

間接覆髄左上2番 MTA

今回は間接覆髄。左上2番で22歳の方です。前歯がう蝕で変色しています。特に痛みなどの症状はありません。このようなケースは臨床でよく見かけるケースだと思います。しかし、患者さんの立場と歯科医師の立場では考えることはかなり違うはずです。

患者さんは、前歯で見た目も悪いので直したいし、特にいま症状もないのでさっと治ると考えられると思います。しかし、歯医者からみると年齢が若いので歯髄腔もひろく、う蝕の範囲も広そうなので麻酔下の処置が必要で、術後の痛みが出る可能性も考えて、最初から抜髄(神経をとる処置)を選択する先生もおられると思います。患者さんサイドからみると痛くもない歯を神経の処置をすると、、

抜髄処置をするとどうしても、そののちに”変色”や”破折”といったトラブルのもとになるのですが、お互い、どうしても先のことより今のことを考えがちなのでこの程度のう蝕で抜髄になることは多いと思います。(先のことより、、のくだりが日本の保険治療の典型的な悪い考え方だと思いますが、そのことについてはまた今度、、)

今回の症例では、虫歯をきちんと取りつつ、神経の保存も念頭に置いた処置です。最初に直接覆髄も念頭に置いて、浸麻およびラバーダムをします。う蝕をランドバーで除去し、最後の微妙なところはEr-YAGレーザーで除去しています。一般にレーザーでの除去は切削片も出ないし、もしも神経が露出しても安全に感染歯髄および感染歯質を除去できると思います。今回は神経が露出することはなかったので、露出した象牙質をMTAでカバーして、仮封して終了です。直後のレントゲンで、MTAが歯髄ギリギリまで充填されている様子がわかりますが、とくに問題は今のところないようです。

あきらめない 話

 

タイトルのとおりあきらめないお話。

術前では病巣もおおきく、まあ、抜歯という判断も妥当と思われなくもない。前医では抜歯してインプラントを勧められたそうです。パノラマレントゲンでも大きな病巣がありそうだし、CTでも上顎洞の半分を占めそうな勢いのある病巣がみられます。ただし、歯に破折はなく、動揺もそれほどではない。また、文献的には病巣の大きさはたいして予後を大きく左右する因子でもないので、しっかりと診断して治療をすれば問題ないのではと思われました。今回の症例では左上の4番も失活していました。また。根尖の大きさにも問題がありました。根尖の大きさの問題を解決する手段はMTAの使用しかないのではないかと思われます。逆にいうとガッターパーチャーで根充する保険治療では治癒しないと思われます。(カスタムコーン テクニックとかあるのですが、予後が不安すぎて、、)この症例もきちんと根管洗浄してMATでの根充を行い経過を観察しています。まだまだ。骨の不安定な所もありますが、臨床的な症状は根管充填直後から消失し経過は良好ではないかと思っています。CTでも大幅な改善を認めています。